〔特集〕サイクリング長野が選ぶ2021年シーズン最も印象に残った信州のレース5選。

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

〔特集〕サイクリング長野が選ぶ2021年シーズン最も印象に残ったレース5選。

 

 2019年の年末企画の中で非常に視聴率が高かった当サイトの独断と偏見で選ぶ「年間ベストレース5選」。昨年は「大人の事情」で記事にはしなかったのですが、今年2021年の5選を特集したいと思います。

ただ、今年はもうレース会場へ殆ど行くことも無くなって、2019年の半分も会場に行かなかったので「お前が長野県の自転車レースを語るんか⁉」と有識者の皆様からご批判のメールを多数頂きそうですが… 自分が会場で見て実際に心を動かされたレースを5つご紹介します。

信州サイクリストの皆さんも、今年心に残ったレースがありましたら是非教えてもらえればと思います!また来年、素晴らしいドラマが生まれることを楽しみにしています。

 

 

 

 

1時間30分の熱闘!諦めない小さな姿が多くの人の心を打つ!!

 

 

 

Coupe du Japon 富士見パノラマラウンド
FDAパノラマカップMTBダウンヒルキッズ男子 より

 

 2021年7月3日(土)今年最初の長野県内開催となった

MTBダウンヒルの公式戦「Coupe du Japon富士見パノラマ」が開催された。

前日の大雨で、早朝の路面は「水田のようなドロドロ」のコンディションとなり

多くのライダーが路面コンディションに苦しむこととなった。

 

レースは、正午に向かって天候こそ回復して行くものの

今度は、ドロドロだった路面が固まり始め

富士見特有の、自転車にまとわりつく粘土質の

土壌が選手達を苦しめた。 

 

この悪条件で行われた、小学生の男子キッズレースに出場した

三島 瑠人(無所属/三重県)は、その小さな身体で

敢然と、この難コースに挑んだ。

 

 

三島選手は、スタート直後からコース序盤の

泥が深いセクションに苦しみ、なかなかペースが上がらない。 

 

 

同走の上級生たちが苦しみながもらゴールへ帰ってくるなかで

キッズのレースが終わり、男女ユース・エリートの予選

タイムアタックが始まる。それでも、まだ山中を走行中の三島選手に

場内のアナウンスもまた、まだ諦めずコース上を走行していることを伝え続けた。 

 

 

難コースと格闘すること約1時間15分

最後の雑木林を抜け、ゴール前に三島選手が姿を見せると

出迎えた関係者や、既に競技を終えた選手達の

歓声が三島選手を迎えた。

 

 

最後のブッシュエリアを抜けて、泥だらけになりながらも
自転車を押しながら
ゴール前に姿を現した
三島 瑠人 選手(無所属/三重県)

 

 

泥だらけになりながら、必死に動かない自転車を押し続け

一歩、また一歩とゴールに向かって歩みを進める

小さなその姿は、会場の多くの人の心に

諦めずに歩み続けることの大切さを

強く問いかけたように思えた。

 

 

 

1時間30分40秒008

 

 

戦い続けた小さなその背中が

この夏、長野県自転車界に

忘れられない記憶を残すこととなった。

 

 

最後まで諦めず歩み続けた三島選手がゴールを迎えた。
その小さくも勇敢な背中が、とても大きく見えた瞬間だった。

 

CJ富士見パノラマDH男子キッズ公式リザルト(PDF/大会公式)

 

 

 

 

 

3年目の正直!50歳のデビュー戦!

 

 

松本サイクルトラックレース2021
大会最終日 男子マスターズ3㎞個人追抜き競争 より

 

 2021年5月2日(日) 長野県内トラック競技開幕戦となる

2021松本サイクルトラックレースが開催された。

 

この大会で、2018年から始まった

長野県自転車競技連盟主催の美鈴湖自転車学校が 

初めて「Team 美鈴湖自転車学校」で初陣を果たした。

 

大会最終日は、チーム最年長51歳の

河野仁(美鈴湖ベロクラブ)が登場し

トラック競技デビュー戦を迎えた。 

 

河野選手は遡ること2年前の2019年

初めて美鈴湖自転車学校でピスト自転車に乗り

その後も自転車学校で小峰烈選手(競輪選手会長野支部長)の

指導を受けて大会出場を目指した。

 

 

初めて「ピスト自転車」に乗る河野選手を
指導する小峰烈選手(競輪選手会長野支部長)

 

 

しかし、コロナの影響もあり2020年の

マスターズの大会が全て無くなってしまう不運もあり

この大会が、足掛け3年目の満を持してのデビュー戦となった。

 

 

デビュー戦を前にウォーミングアップをする河野選手
小峰選手愛用のホイールやヘルメットでレースを迎える。

 

 

レースは、デビュー戦の緊張もあり

いきなりフライングを取られるものの 

2回目は鮮やかなスタートを決める。 

 

9周回(3㎞)を、常に全力疾走という

非常に苦しい競技でありながらも

必死にペースを落とすことなく走る姿は 

 

年齢を重ねても「新しいことへチャレンジすること」の大切さと 

コロナで不遇な年があったとしても、我慢して耐えることで 

次のチャンスがまた訪れるということを教えてくれるかのようだった。

 

 

3分54秒783 

 

 

初めてのレースで、驚きの4分を切る好タイムでゴール

表彰台こそ逃したものの堂々たる4位入賞。

 

見事なデビュー戦を終えてインフィールドへ戻ってくると

河野選手を指導した小峰支部長が出迎え

言葉をかけている姿は

今年の数ある長野県自転車シーンの中でも

非常に印象的なシーンだった。

 

 

デビュー戦を終えてインフィールドに戻って来る河野選手を
競技役員として大会に従事していた小峰選手会長が迎える。
美鈴湖自転車学校という一つの事業としても大きな成果を生んだ一瞬。

 

 

 

 

 

渾身の単独エスケープ! 涙の初優勝!!

 

 

2021インターハイ・国体予選 長野県大会ロードレース
長野県高校総体自転車競技 男子ロードレース より

 

 2021年6月5日(土)

本年度のインターハイ長野県予選となった

長野県高校総体自転車ロードレースが

「野沢温泉クロスカントリースキー場」で開催された。

 

 

前年秋の県高校新人戦ロードで長野県高校自転車界に彗星のように現れ

3位となったエクセラン高校3年生の新星 小山大登(こやまたいと)が 

自転車競技を始めて半年、最初で最後となるインターハイ出場を

目指し長野県大会に出場した。

 

 

対するは、優勝候補の大本命は秋の新人戦優勝を果たし

長野県高校中長距離エース中島壮琉(松商学園)。

県最大の部員数8名を誇り、加科・小松という

全国レベルの強力Wスプリンターを擁する松本工業。 

その他にも、注目の新入生2名を擁する飯田OIDE長姫、

一昨年までの絶対王者である飯田風越など

南信州・飯田勢の動向も大きなキーポイントとされた。

 

 

〔大会プレビュー〕

 

 

会場は、コロナの影響でおよそ

3年ぶりの高校自転車開催となる

野沢温泉クロスカントリー競技場。

ほぼ平坦の1周約1㎞のコースで

スプリンター有利のコースレイアウトとなった。

 

 

通常であれば、6名のアシスト+2名の強力スプリンターを

擁する松本工高が数の上でも絶対有利な条件であり、

単騎出場で共にクライマー・タイプの小山・中島(松商)両選手の

アタック(先行逃げ切り)さえ封じ込めれば勝てるという

小山にとっては不利な条件下でのレースだった。

 

 

レースは晴天で心地よい気候の中スタート。

序盤は戦前の予想どおり、全選手が牽制状態のまま

静かな展開でレースが進んで行く… 

 

 

数的有利な松本工業は、このまま大集団で

最終局面を迎え、最後のスプリント勝負に持ち込めば

爆発力のある加科・小松ので必勝態勢となる。

 

クライマーである小山・中島(松商)が勝つためには

どこか早い段階で、二人一緒に仕掛け

松本工のスプリンターを後方へ追いやり

逃げ切らなければ勝機は無い。 

 

 

レースは、にらみ合いが続いたまま

淡々と周回を重ね中盤戦へ突入して行く…

 

 

レースが動いたのは、残り10周(10㎞)を前にした

僅かな登り区間で、小山大登が単独でアタックして

エスケープを試みる。

 

 

コース上にある唯一の緩やかな短い登りで
単独でアタックする小山大登(エクセラン高)
残り約10㎞で小山の単独ということもあり集団はこれを見送った。

 

 

松本工も、小山・中島(松商)の二人を含む

「複数の逃げ」であれば

このアタックを潰しに行ったかもしれないが 

小山大登「単独での残り10㎞」だったことで

松本工・松商・南信勢共にこのアタック(逃げ)を容認。

 

 

 

これが勝敗を大きく分ける結果となった。

 

 

一見、無謀のように思われたこのアタックだが

集団が容認したことで、その差がみるみるうちに広がり

最大で1周約1㎞のコースの半分までに広がった。

 

 

メイン集団も共闘し、残り5周ほどから小山大登を追い

徐々に差を縮めてゆくものの、むしろ集団側も

小山を追って行く中で疲弊し、人数を大きく減らして行く。

 

 

いよいよ、残り3周になると 

逃げる者・追う者ともに 

ギリギリの戦いとなって行く…

 

 

「逃げる小山」を追うメイン集団だが、距離を縮めながらも
思うように差を縮められず苦しい展開となり
勝負は残り3㎞の最終局面となった。

 

 

この辺りから「最終スプリントの局面」を控えて

メイン集団も小山を追うよりも 

集団内の2・3位争いの様相が強くなってくる。

これにより、小山の優勝はほぼ決定的となり 

最終ストレートを立ち上がる小山が

歓喜の声と共に、自転車競技を始めて

僅か半年で歓喜の長野県高校ロードレースチャンピオンとなり

インターハイ本戦の長野県代表の座を手中にした。

 

 

約10㎞の単独エスケープを決め、自転車競技開始わずか半年で
長野県高校ロードレース王者、インターハイ出場を決めた小山大登。
その堂々たる戦いぶりに加え、僅か半年という短い高校自転車生活を
誰よりも直向に取り組んだその姿が多くの自転車関係者の心を掴んだ。

 

 

 

秋の新人戦から、自転車学校や県の強化合同練習会にも積極的に参加し

ここまで、たった半年間という僅かな高校自転車生活ではあったが

直向に競技に向き合った姿を知る多くの人の琴線に触れる

涙涙の初勝利だった。

※北信越大会については、ページ下部のベストレース5を参照

 

 

初優勝のゴール直後に人目を憚らず声をあげて大号泣する小山大登の姿は
会場に集まった多くの人の涙を誘う今年の長野県自転車界で
一番エモーショナルな瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

Jr.オリンピックの表彰台へ… 田中駿埜の初挑戦!

 

 

2021 JOC ジュニアオリンピックカップ自転車競技大会
男子U-15 1㎞タイムトライアル決勝

 

 2021年7月17日㈯ 松本市美鈴湖自転車競技場で

JOCジュニアオリンピックのトラック競技が開催され

男子U-15 1㎞タイムトライアルに田中駿埜が出場した。

 

遡ること1年前の秋に美鈴湖自転車学校で

自転車競技を始めた田中駿埜(上田市立塩田中学2年)。

 

もともと、中学校では陸上部に所属し

長野県内の中学生の中でも有力な短距離選手として活躍。

自転車でもその高い潜在性と、自転車学校へ毎回通っては

直向に競技に取り組む姿から、自転車学校の中高生の中でも

徐々に中心的な存在となりつつあった。

 

長野県強化合同練習会で先頭を走る田中駿埜(塩田中学)
後方を走り指導するのは、競輪選手の堀江省吾選手

 

田中は、昨秋から「ジュニアオリンピック出場」を掲げ

陸上競技と並行しつつトレーニングを続け

6月に開催された、国体・インターハイ長野県予選

中学生ながら初出場。自身にとってもこれが

自転車競技のデビュー戦となった。

 

 

この大会で、1分19秒の好タイムを出す活躍を見せると

JOCジュニア五輪の出場標準タイムを突破し

目標だったジュニア五輪に選考されることとなった。

 

 

インターハイ・国体予選となる長野県大会に出場した田中駿埜(塩田中)
初出場となったが1分19秒と好タイムを記録した。

 

 

初出場が決まり、大会が近づき

Jr.オリンピックの出場メンバーと

出走リストが発表されると、持ちタイムから 

男子U-15最終組のホームストレートという

最も注目を集める出走順となった。

 

 

「男子U-15 1km タイムトライアル決勝」の出走順は
最終組のホームスタートとなり。最も注目を浴びる出走順となった。
普段全く緊張をみせず
飄々としている田中選手が
ウエイティングエリアで緊張している姿が非常に印象的だった。

 

 

レースは、1㎞・競技場を3周の短期勝負。

高校生を含めた長野県のジュニア選手の中で

最も最初の半周回のスピードが速い田中は

スタートを無難に決めると

持ち前の高回転ペダリングでスピードを上げて行く。

 

地元の美鈴湖ということもあり

会場の仲間たちの大きな声援を受けて

課題となった中盤から終盤へのつなぎも

無難にこなし、最後の1周では力強い

ペダリングでゴール。

 

 

1分16秒029

 

 

初めての自転車の全国大会

初出場の自転車のジュニアオリンピックの結果は準優勝。

 

表彰台では、終始堅い表情を崩さなかった田中選手だったが

長野県チームに帰り、チームメイトに囲まれると 

ようやく表情が緩んだ。 

 

レース後「まだ出来た!と云う思いもある…」と

本人は口にしたが、仲間と共に約1年間

切磋琢磨し掴んだこの夏の活躍は

2021年の長野県自転車界を代表するシーンだった。

 

 

この日の最後の登場となった田中だったが、先に出場した
中学・高校の先輩達は誰も帰ることなく田中を応援した。
準優勝という記録も去ることながら、およそ1年間にわたり指導をした
長野県の競輪選手・先輩選手・仲間たちと共に歩んだ経験が
この夏手にした最大の収穫だったことと思う。

 

 

〔田中選手のレースの模様〕

(参照元:Youtube/JCF)
※クリックすると田中選手のレースからとなります。

 

 

 

 

皆で行くぞ!インターハイ!Team Naganoの挑戦

 

 

2021インターハイ最終予選ロードレース
北信越高校総体 男子ロードレース決勝 より

 

 2021年6月18日(金)インターハイ最終予選となる

北信越高校総体が5年ぶりに長野県で開催された

大会は、男子スクラッチで加科爽人(松本工3年)が優勝

チームスプリントで松本工業が準優勝

1㎞タイムトライアルで中島壮琉(松商3年)が3位。

3㎞で小山大登(エクセラン3年)が3位など

長野県3年生の活躍が目立つなかで 

大会は4日目の「ロードレース」を

木島平村クロスカントリースキー場特設コースで迎える。 

 

 

春のセンバツでも決勝へ進出した得意のスクラッチで
堂々たる勝利を収めた加科爽人(松本工高)は
ケイリンでも準優勝するなど絶好調でロードを迎える。

 

 

 

既にインターハイ本戦への出場枠は各県優勝者の1枠が与えられ

長野大会優勝者の小山大登(エクセラン)が1つ。

後は、「この大会の結果」と「他地域ブロック」との兼ね合いとなる。

 

 

例年であれば、北信越の枠は10程度か?

そうなると北信越の5県の優勝者出場枠を差し引いて

このレースで得られる枠は「最大で5」程度。 

 

 

大会三日目のトラック競技が終わり、競技場の清掃をしながら 

各県・各選手達が、明日のロードレースへの想いを熱く口にしていた。

 

 

長野県の選手達は、地元開催ということもあり

一番最後まで掃除をしていたが

今年最終学年の3年生が集まり

真剣に明日のレースの相談をしていた。 

 

 

作戦の内容は、あーでもないこーでもないと

内容は現実味があるのか?無いのか?良く解らなかったが…

 

 

それよりも、皆でインターハイへ行くという強い想いを

選手達が自主的に口にしていたことが非常に印象的で

どちらかと言えば、各自タイプも違い、団体行動をしない

今年の3年生達が集まって話し合いをしていることが

驚きだったし、自分達で考え・意見を持ち寄っ話している

この行動が今年の長野県高校自転車を象徴するシーンでもあった。

 

 

レース当日は晴れ、2 Days Race in 木島平でも

使用されるこのクロスカントリースキー場は

平坦部分と下り区間、短くも急な登りを有するコース。

 

 

長野県は3年生3名に加え、2年生1名・1年生2名の

合計6名が出走した。

 

 

インターハイ最終予選となる北信越高校自転車ロードレースは
各県の代表19名で行われた。

 

 

レースは、インターハイへの最後の関門

ということもあり、序盤は比較的穏やかな展開ながらも

長野県勢は、レース直後から 既に出場権を持っている

長野王者の「小山が仕掛けライバル達を攪乱する」という意図が伺えた。  

 

そうなると、クライマーの中島(松商)を使い

今大会絶好調のスプリンター加科(松本工)で勝負という

図式に必然的になるはずだったのだろうが…  

 

 

序盤でいきなりアクシデントが起こる。

 

 

レース序盤に集団で起きた落車の影響で

小山(エクセラン高)が後方へ取り残されてしまい

集団から大きく遅れてしまう。 

また、下級生3人もこの辺りから徐々に遅れて始め

早くも「Team Nagano」の目算は崩れてしまう。 

 

 

 

小山が来ない!長野県関係者が騒然とする中で
落車に巻き込まれ、集団から大きく送れた小山大登。
本人は落車せずダメージは無かったものの

メイン集団から大きく遅れてしまう。
しかし、終盤にここから
大きく順位を巻き返す。

 

 

 

レースは中盤戦を迎え、春のセンバツで活躍した

福井県チャンピオン篠島(福井科学技術高)が一人飛び出し

メイン集団は6名程度、長野県で残っているのは

3年生の加科(松本工)・中島(松商)の2名だが

問題は、残り3名が新潟・1名が石川という状況

 

 

石川は1名でやや苦しいが、

既に石川チャンピオンとして出場権を持っているので無理はしない。

 

一方で新潟は3名がしっかりと残っており

実質的なインターハイ出場争いは 

長野 vs 新潟となる。 

 

 

一人飛び出している福井の選手も

既にインターハイ出場枠を持っている選手であり

3名の新潟選手の1名も新潟チャンピオン。

 

 

少なくともこの集団の中で

最低限、長野が新潟の2名を抑えれば

確実にインターハイ出場権が獲得できるチャンスが巡って来た。

 

 

 

画像後方の逃げるオレンジの福井に対し、メイン集団は新潟3名・石川1名・長野2名が追う。
この6名の中に3名の各県チャンピオンがおり出場枠を既に獲得していたため
インターハイ出場権争いは実質「長野vs新潟」となる。
出場権が確実に5であれば、このメンバーでそのままゴールすれば
ほぼ出場権は手中に収めることが出来るが…他ブロックとの兼ね合いもあり
確実に出場権を獲得するのであれば、より上位でゴールをしなければならない。
新潟勢の強さは既にトラック競技で証明されており、その上で
数的不利をどう覆すか?が後半の鍵となる。

 

 

中盤に飛び出した福井の逃げを集団は完全に容認

「長野vs新潟」の構図でレースは終盤を迎える。

 

数的不利の長野勢は、加科(松本工)中島(松商)が

積極的にアタックを繰り返し

新潟・石川勢を揺さぶると

これが功を奏して徐々に両県の選手が

ふるい落とされて行く… 

 

 

一方で、その代償も大きく

加科(松本工)が途中で脚を攣り始め

平坦区間で何度も千切れそうになるが… 

 

 

それを中島(松商)が、気を吐き

何度も遅れる加科まで戻って

激を飛ばし引っ張って行く。

 

 

残り3周、加科(松本工)の消耗が激しく何度も遅れそうになる中で
中島(松商)が、遅れそうになる加科の所まで戻り何度も引っ張り
上げながら
声をかけて加科をサポートして行く
【中央の加科に声をかける左の中島】

 

 

誰の目にも加科の消耗は明らかだったが

中島の渾身の走りもあり、我慢ガマンの走りで最終周回へ…

 

 

気が付けば、数的不利だった長野が逆に数的優位に立ち 

最終スプリントを待たずして、中島・加科の

4位以上が濃厚となり

インターハイの出場権をほぼ手中に収める。

 

 

最後の最後まで粘りに粘った長野勢

 

 

最終順位は…

 

 

中島壮琉(松商)が3位

加科爽人(松本工)が4位 

さらに落車で後方へ取り残されてしまった

小山大登(エクセラン高)が大きく巻き返しての5位。 

 

 

思わぬ誤算があり、本人達との思惑とは

大きく違ったものの

戦前この3人が口にしていた

「皆でインターハイ!」その想いが

実る結果となった。 

 

 

レース終了後に、このレースで気を吐いた 

中島壮琉(松商)が、インタビューで

「今日はTeam Naganoで戦いました!」

と語っている姿がとても印象的だった。

 

 

 

 

そんな激闘から一か月後…

 

 

 

 

2年間コロナに翻弄され

今年3人しかいなかった3年生全員が

最初で最後のインターハイに出場。 

小山大登(エクセラン)は、インターハイ本戦でも

単独エスケープを見せ15位となり

ここ数年の長野県勢で最高の成績を残した。

 

 

 

 

 

 

 

《サイドストーリー》もう一つのインターハイ

 

 5年ぶりとなった、この北信越高校総体

北信越5県から高校自転車選手が一同に集うなかで

一人、同じ高校生ながら規定により大会に出場出来ず

「大会補助員」というかたちで大会に参加したのが

上田千曲高校定時制1年の児玉空大だった。

 

 

北信越高校大会で競技補助員として働く児玉空大(上田千曲高)

 

 

現在の規定では、全日制・定時通信制のインターハイは

別大会として分かれており、同じ高体連であっても

登録が違うため出場は出来ない。 

 

一昨年から美鈴湖自転車学校に通い

同じ高校生でありながらも

仲間たちと共に出場出来ない状況下で

本人は、大会の競技補助員を申し出て 

一言の不平・不満も恨み言もなく 

淡々と同じ高校生のレースの補助を行った。

その姿は、多くの自転車関係者たちの琴線に触れた。

 

 

 

北信越大会トラック競技最終日に、選手達が木島平へ移動したあと
清掃を終えて、同じく補助員に来ていた、北澤竜太郎長野県代表主将と
堀江省吾選手(競輪選手会)と3人で誰もいなくなった競技場で
練習している姿は本当に印象的だった。

 

 

木島平で行われたロードレースでも

「学校に遅刻する!」と急いで上田市に向けて

帰路についた姿も印象的だった。 

 

そんな児玉選手は、8月に静岡競輪場で開催された

定時制のインターハイ「全国高等学校定時制通信制体育大会」に初出場

1年生ながらも、1㎞タイムトライアルで5位入賞を果たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイクリング長野より

 

 

 今年のベストレース5選いかがでしたか?

2021年を振り返ってみると、皆さんご存じの通り

東京オリンピック・パラリンピックに派遣されていました。

まだイジられるのですが…

ずっとテレビに映るような仕事だったので

 

オリンピックの梶原選手の銀メダルも

パラリンピックの杉浦選手の金メダルも

身近過ぎるくらい身近に見ていました。

 

特に杉浦選手とは、自分の役割がら

毎日、挨拶したり言葉を交わしていて

レースのたびに

「頑張りますよぉ~!」と明るく

ガッツポーズで出て行く姿を見せてくれて

だんだんと他人とは思えないように思えてきたのですが…

 

 

それでも!

 

 

オリンピック・パラリンピックのあの場にいても

どこか遠くの出来事のように感じて

やはり感動はあったけど…

 

 

長野県で開催されたレースで

長野県選手が活躍するというのは 

もう… 本当に別のモノですよね。

 

 

長く長野県の選手達を見てきて

良い時も悪い時もあって…

 

 

その結果が勝ちであろうと

負けであろうと、それぞれが強く胸に残り

それぞれに語り継ぐストーリーがある。

そんな物語を今年は汲み取ってみました。

 

 

一昨年のここでも書いたのですが

印象に残るレース」というのは

勝敗よりも…

 

 

ソレを観た人の心に何を与えられたか?

何を残すことが出来たか? 

それに尽きる気がします。

 

 

勝者は気高く尊い存在です。 

しかし、皆さんは

 

 

ツールドフランスの過去10年の優勝選手を並べられますか?

甲子園の過去10年間の優勝チームを正しく覚えていますか?

 

 

では、ツールドフランスの名場面を挙げろと言われた時はどうでしょう?

甲子園で最も印象に残ったチームを挙げろと言われたらどうでしょう?

 

 

その思い出はきっと、過去10年の優勝者よりも

皆さんの記憶の中に、より強く鮮明に記憶に残っていることと思います。

 

 

前もどこかで言いましたが、勝負である以上

勝敗は1番大切なものです。 

しかし、勝敗の前にもっと大切な0番目というのが

物事には確かにあるのだと思います。

 

 

長野県の選手達には、その0番目の

Xファクター(何か)を大切にして欲しいと思います。 

そして、その「勝利より大切な何か…」 は

その人、その人の価値観によって異なります。

 

 

来年も、今日初めて自転車を観戦に来た人が見ても

観る人の心を震わすような走りと

長野県の自転車選手がこんなに頑張っているんだ!と

ここで語りたくなるような走りを期待しています。

 

 

2021年がもうすぐ終わります…
また来年も、熱い走りを期待しています。

 

という訳で、今年の

ベストレース5選でした。

恒例の独断と偏見ではありますが

まだまだ紹介したいレースが沢山あります。

 

ただ、勝ったとか、負けたでは無くて

それよりも、今年の印象的なシーンを

長野県の自転車史に綴りたいという想いと

この記事を見て、心を熱くしてくれる

人がいて、初めてこの5選は

意味があるのだろうと思います。

 

来年は、俺が信州の自転車を熱くする!と

思ってもらえれば最良です。 

 

今年はあまり自転車競技を観ることが

出来なかったですが、感動を与えてくれた 

信州の全てのサイクリストの皆さんと 

コロナ禍の中でも、長野県まで来てくれて

力強い走りを見せてくれた

全ての選手・関係者の皆さんに

心より御礼を申し上げます。

 

また来年も、人の心に残るような

走りを期待しています。

 

関連LINK

長野県自転車競技連盟

MTBリーグ

日本自転車競技連盟