〔エッセイ〕令和2年度「長野県交通統計」から県内の自転車事故の傾向と事故防止を考える。

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

長野県の自転車事故を考える。

 

 ここ数日、長野県を寒波が襲っていますがいかがお過ごしでしょうか?

 

さて、例年ならば春先に行う「長野県の交通統計から県内の自転車事故の傾向と事故防止を考える」エッセイですが、今年はご存じの通り、当サイトは4月からフル回転、オリ・パラに徴兵されてしまったせいで6月から9月までほぼ長野県におらず、さらにパラ終了後から溜まっていた自転車関連の仕事で12月までドトーの日々を送っておりました。今更この記事を書くか迷ったのですが、やはり自転車の安全運転に関しては非常に重要なことなので改めてここに書き残したいと思います。是非、長野県サイクリストの皆さんの今後の安全運転にお役立ていただければと思います。

例年のことですがこの記事に対して「大本営発表だ!」と揶揄される有識者の皆様がおられることも良く存じておりますが、当サイトのスタンスとしては、テストでもあるまい正確な数字どーこーよりも、我々の県の自転車事故の傾向をザックリとでも知って頂き、日々の安全なサイクリングライフに役立ててもらえればと思います。

 

〔参考資料〕
令和2年 長野県交通統計(自転車)(PDF:長野県警察

 

 

 

 

令和二年度 長野県内自転車事故件数

 

 令和二年度の長野県警発表の「交通統計」によると

昨年の長野県内では…

 

 

 

自転車事故が628件(全交通事故の13.1%)

・自転車事故による死者は9名(全交通事故死亡者の19.6%)

・自転車事故による負傷者は611人(全交通事故負傷者の10.6%)

 

 

前年度に比べると

『事故件数が-144件』『死亡者が+9名』『負傷者が-152件』

となりました。

 

 

 

長野県の自転車事故の特徴

 

また、県警によると昨年度の県内で発生した

自転車事故の特徴として下記の傾向が挙げています…

 

 

◇県内の自転車事故の特徴

 ① 月別の事故発生件数は6月が最多
 ② 時間帯別では、6~9時台及び16~19時台が多い
 ③ 事故類型別で、出合い頭が死傷者の約6割を占める。
 ④ 原因別では、死傷者の7割以上が誤った通行

 

2020年はコロナ禍という特異な年でしたが 

春先に非常に多くの自転車事故が発生 

特に、5月に北信エリアで事故が多発して 

当サイトでも何度か注意を促しました。

 

時間帯では、前年同様に通勤・通学の

時間帯が多く、この時間に関しては

全ての自転車に乗る人にとって

注意が必要となります。

 

 

 

 

世代別事故負傷者・死亡者数

 

 昨年度の世代別の事故「負傷者」・「死亡者」数は

以下の通りとなっています。

 

年齢区分 負傷者(前年比) 死亡者(前年比)
6歳未満  1名(+1) 0名(±0)
6~8歳 4名(-9) 0名(±0)
9~12歳 19名(-1) 1名(+1)
13~15歳  61名(-38) 0名(±0)
16~19歳 168名(-55) 1名(+1)
20~24歳  42名(-15) 0名(±0)
25~29歳  44名(-13) 0名(±0)
30~39歳 51名(-7) 0名(±0)
40~49歳  57名(-14) 0名(±0)
50~59歳 58名(-6) 1名(-1)
60~64歳 25名(±0) 0名(±0)
65歳以上 81名(-21) 7名(+6)
合計 611名(-152名) 9名(+7名)

 

 

長野県全体の交通事故が大きく減少!その要因は?

 この数字で驚いたこと、昨年の6月までに増え続けた自転車事故だったが

1年間を通してみると、事故件数自体は前年比で -152名と大きく減少したことが

大きな特徴として挙げられる。

 

特に昨年まで、最も事故が多い年代だったティーンエイジャーの事故減は

大きく13歳から19歳まで」の世代で前年比で -93件の減少

県内全体の自転車事故減に大きな貢献をするかたちとなった。

とりわけ、高校生世代の「16歳から19歳」の減少が -55件となり 

各自治体・学校が積極的に行っている、各学校でのスタントマン等を用いた

交通安全教室や、高校生による・高校生を対象とした

自転車交通安全啓蒙活動などが

功を奏しているのでは無いか?と考えられる。

 

 

 

 

高齢者の死亡事故が大きく増加した背景

 2020年の大きなトピックスとして、65歳以上の高齢者の死亡事故が多発

その死亡原因として「転倒の際に頭部を強打」する事例が非常に多く

死亡者の殆どがヘルメットを未着用だったことが挙げられる。

 

これに対して、長野県は2020年7月

死亡事故が発生した7市町村在住者を対象に

高齢者ヘルメット着用促進モニターの募集を行い

上田市では、いち早く高齢者へのヘルメット補助制度を導入するなど

再発の防止にも取り組んだ。

 

 

 

 

衝撃が走った高校生サイクリストの死亡事故

また、当サイトでも再三とりあげている通り

長野県自転車界において衝撃的だったことは、

2020年8月に千曲市で発生した高校生によるスポーツバイクでの

死亡事故で、スポーツバイクで走行中の高校生が、峠を下る際に

センターライン付近でトラックと正面衝突し、トラックの下へ入り込み

胸を強打して亡くなるという痛ましいものだった。

 

この事故は、長野県内のスポーツ自転車愛好家にとっても

長野県自転車情報を出している当サイトにとっても

非常に重く受け止める事象であり、長野県自転車競技連盟では 

美鈴湖自転車学校で小中学生の受講生・小中学生の自転車選手を対象に

この事故の分析と、日頃の公道でのトレーニングの際の注意点、

再発防止の講習会を行った。

 

 

 

 

事故の種類と事故発生地点の傾向

 

 ここでは、昨年の長野県内では…

「どんなタイプの事故が多かったのか?

どんな場所での事故が多かったのか?」

についての傾向を見て行きます。

 

 

◇事故類型死亡者・負傷者数

 1位 出会い頭 371名 ※死者2名
 2位 右折時  100名
 3位 左折時    92名
 4位 その他    19名 ※死者1名
 5位 追い越し   15名
 6位 正面消灯  7名
 7位 追突    6名 
 7位 自転車単独 6名 ※死者6名
 9位 すれ違い時 4名 

 

 

 

 事故の種類として最も多かったのが

昨年同様に「出会い頭」によるもので、改めて走行中は

前方をよく確認しながら走ることが重要となる。

2位・3位も同様に「右折時」「左折時」の対車両事故が続いた。

右左折時の時はゆずりあう気持ちの余裕を持ちたい。

そして今年の顕著な傾向として、単独事故で

6名が亡くなっている。この状況から、例えば

周囲に歩行者・自動車がいなくとも

走行中は集中力を切らすことなく走ることが求められる。

 

 

 

◇事故発生場所別 死亡者・負傷者数

 1位 交差点   448名 ※死者2名
 2位 単路その他 142名 ※死者5名
 3位 交差点周辺   12名  ※死者2名
 4位 その他         7名

 

事故発生エリアについては、今年も「交差点」もしくは

「交差点付近」が事故要因の半数以上を占めており

改めて交差点付近を走行の際は、

最も事故が起こりやすい場所であることを認識して

走行することが必要。

また、今年の傾向として単路での走行も注意が必要。

 

 

 

事故要因の傾向

 

 最初に長野県の自転車事故傾向として

7割が誤った通行によるものとされていたが

ここでは、事故要因についての傾向を見て行きます。

 

◇事故の要因

 1位 正しい運行中   168件  
 2位 動静・前方不注意 130件 ※死者1名 
 3位 安全不確認    118件
 4位 交差点安全進行違反  93名   ※死者2名
 5位 その他        26名 ※死者5名
 6位 徐行・通行方法違反  23名
 7位 一時停止不停止    13
 8位 右側通行      9名
 9位 信号無視      4名
 10位 優先通行妨害等        2名
 11位 不明             1名  ※死者1名 

 ※事故件数とは別に、死傷者の7割が誤った走行をしている

 

 

これをみると、殆どの自転車事故の要因となるのが

「不確認」と「不注意」となる。改めて運転中は

運転に最大限の注意と集中をするように心掛けたい。

 

このデータで最も興味深いのは、悲しいかな

正しい通行をしていても事故にあってしまうということ

そして、昨年発生した自転車事故のうち約500件が

乗用車との事故であることから、改めて自転車走行の際には 

自動車に細心の注意を払いながら

「自転車・自動車・歩行者」の共存を心掛けたい。

特に、ライセンスを持つ選手、上・中級者は

全てのサイクリストの規範となるような

立振舞いを強く願いたい。

 

 

街乗りをする際に交通事故にあわないためのテクニック

 

(参照元:Youtube/JCF)

 

 競技者の皆さんはご存じのとおり

JCFが「スポーツバイク基礎技術」のビデオ動画を公開しました。

この動画の作成に関しましては、美鈴湖自転車学校でも

ロケが行われるなど、皆さんにとって既に馴染み深いと思いますが

トラック・ロード・MTB・BMXなどの基礎スキルの他に

第4章では、街乗りで事故に遭わないための技術も紹介されています。

是非、県内全ての競技者の皆さんにもご覧いただけますよう

お願いを申し上げます。

 

 

 

 

まとめ

 

 

 以上のようなデータを整理して

改めて、自転車に乗る際の注意点をまとめると…

 

 

 ・多くのサイクリストの努力により事故件数は前年比で減少した。

 ・残念ながら前年に比べて死亡事故が増加した。

 ・死亡要員は頭部強打が多くヘルメットの着用が課題。

 ・自転車事故は朝・晩の通勤通学時間帯に最も多く発生する。

 ・最も多いタイプは「出会い頭」「右左折時」。

 ・事故が最も起こりやすい場所は「交差点付近」。

 ・事故要因となるのは「不確認」と「不注意」。

 

  たとえルールを守っていたとしても
    事故に遭うことは往々にしてある!

 

 

 

以上が昨年、令和3年度の長野県警発表の『交通統計』でした。

このエッセイで大切なことは、冒頭でも申し上げたとおり

テストでは無いので正確な数字どーこーでは無く…

 

 

長野県の自転車事故の傾向がどんなものなのか? 

それをザックリと知っておいて欲しいということです。

 

 

たったこれだけのことですが

知っているのと、知らないのでは

雲泥の差があると思って下さい。

 

昨年同様のお願いになりますが

スポーツ心理学の中にもあるのですが

ピンチの際(有事の際)、最もモノを言うのは

「知識」と「経験」がなにより重要であると言われています。

 

 

上級者の方ほどこの傾向を知ってもらい

年齢にかかわらず「選手ライセンス」を

持つサイクリストには。UCIが提唱する

「サイクリング・フォーオール」の精神を

初心者の方や、後輩に伝えて

スポーツサイクリストが自転車に乗る全ての人達の

模範で会って欲しいと願います。

 

 

 

というわけで、今年の白書…

つまり、昨年の長野県内の

自転車事故に関する告知でした。

やはり、昨年の8月の千曲市の事故は

当サイトとしてもコメントを出しましたが

やはり本当に悲しい出来事でした。

千曲市の方が言っていましたが

誰もハッピーな者がいない

ただただ悲しい事故だった… 

当サイトとしても再びこうした

痛ましい事故が起こることが無いように

 

遅ればせながらこのエッセイが

誰かの考える糧になり

その結果として悲しい事故が

一つでも減ればと願っています。

 

関連LINK

令和二年度「交通統計」(長野県警察)

自転車の安全利用推進委員会

長野県警察

長野県自転車競技連盟