〔レポート〕日本自転車の未来を担う「東京サイクルデザイン専門学校」卒業制作展《卒祭》レポート。

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

「東京サイクルデザイン専門学校」卒業制作展《卒祭》レポート。

 

 

 去る2024年3月9日㈯、原宿にある自転車の専門学校

東京サイクルデザイン専門学校(TCD)の生徒さんたちの

卒業制作展示会「卒祭2024」を見学に行って来ました。

 

 

TCDといえば、多くの自転車愛好家の皆さんがご存じの通り

日本初の自転車の専門学校であり、関西キャンパス(大阪市)も併設。

まさに日本自転車界の未来を担う若者たちが2年~4年制で

フレーム制作や、自転車のメンテナンスなど、

業界の未来を見据えた学習を行っています。

 

 

今回は、今年度の卒業生による

卒業制作を見学させて頂く機会を得ました。

本当に次代を担う若者たちの情熱を感じる

素晴らしい展示会で、その熱に触れて自分も

当サイトで、どうレポートして良いのか?

非常に難しさを感じますが、

長野県のサイクリストの皆さん

自転車関係者の皆さんにも

是非、知って欲しい世界でもありますのでご覧ください。

 

 

 

 

TCD「卒祭」レポート

 

 

 今回ですが、「外苑クリテリウムならびに、

学連主催の「TOKYO 2025 デフリンピック」の

シンポジウムのために東京出張をしたのですが

出発の3日ほど前に、日本自転車ジャーナリストの

草分けであり「エロイカジャパン」の審査員

ジャパンバイクテクニーク」の委審査員長でもある

Coppiさんから…

 

 

東京来るなら、TCDの「卒祭」見に来ませんか?と

 

 

お誘いを頂いただき

Coppiさんをを通じて、学校に取材をさせて頂く

かたちとなりました。

 

 

午後から、代々木オリンピックセンターで行われた

デフリンピックのシンポジウムに出席のため

本当に僅かな時間しか見学出来ませんでしたが

以下レポートです。

 

 

 

東京に都合10年以上住んでいたが
初めて訪問する東京サイクルデザイン専門学校。
先ず、場所が思いっきり「原宿」で
元新小岩住民、元平和島島民の
自分は若者の聖地に思いっきりビビる!
しかも服装が思いっきり
美鈴湖自転車競技場にいる時と同じ格好…

 

学校は「学校法人水野学園」が運営、自転車学科の他に
「ジュエリーデザイン」・「時計デザイン」・「靴デザイン」などの学科があり
各学科の卒業制作発表も同時に行われ
場所柄、外国人観光客なども多く訪れていた。

 

早朝に到着すると、ズイフトを使って
「東京キャンパスvs大阪キャンパス」のバーチャルレースの
準備が行われていた。

 

お昼には「ホイール仮組選手権」が開催予定
関係者の飛び入り参加も募集されていた。

 

バーチャル自転車の「東京vs大阪」対抗戦のウォーミングアップが始まり
キャンパスの2階・3階と少しずつサポーターが集まり始める…
残念ながら時間の関係で、卒業制作の見学に行きました。

 

Coppiさんは、現在こそ、主なコンクールの審査員・審査委員長として活躍中だが
やはり日本のサイクルジャーナリストの第一人者として
様々な角度から自転車を撮影し取材を行う。

 

どの自転車も全て生徒さんがイチから企画・設計を行い
在学中に学んだ溶接技術などを駆使して細部まで丁寧に作られていた。
カーボンフレームかと見紛う美しい「ろう付け」
【作者/HIROKI MURANAKA / 村中 洋輝

 

今回の卒業展示会で各賞を受賞した作品には
クリスタルのトロフィーが飾られていた。

 

自分も作品を制作した学生さんたちに沢山話を聞かせてもらったが
どの作品にもそれぞれのストーリーがあり、どんな想いで制作をしたのか?
自分の作品の魅力のほか、こうしたほうが良かった…という
改善点なども聞けて素晴らしい体験となった。
どの生徒さんと話しても、一人一人に自転車に対する「熱」を感じた。
齋藤 航平氏にインタビューするCoppiさん〕

 

齋藤 航平氏の作品「Saturn」
いわゆる「自転車然」という造形の作品が多いなかで
コンセプトは子供の歩行器おもちゃ。
子供は歩行器にまたがり、バスケットボールを足で操作することで
この歩行器をコントロールする。また、子供が大きくなり役目を終えた際は
サイドテーブルとして使用出来るように設計されている。
この作品の紹介サイト

 

この作品のメインコンセプトは「長期的に利用可能な環境に良いプロダクト」で
素材は自身がアルバイトしている店で廃材となったスケートボードの板を再利用している。
こうした、我々が想像する「自転車」という概念に捉われない発想は
若者ならではのモノで《どんな発想をするか?》というのは
この展示会を見学するうえで非常に注目すべきポイントだった。

 

そのほか「ジュエリー学科」の作品も見たが
気づいたことは、自転車学科・ジュエリー学科共に
非常にアジア各国からの留学生も多く、学科によっては1/3が留学生とのこと。
ものづくり日本の技術を学びに来る若者が多いことも
今回の訪問で知ることが出来た。
インバウンドだけでなく、将来こうしたアカデミックな部分な分野の
発展も期待したい。

 

滞在時間はおよそ1時間30分程度だったが
会場を離れる頃にはランチタイムとなり
食事処も少しずつ混み始めてた。
タイミングが合えば来年も是非訪問したい。
このあと、学校から歩いて大学自転車フォーラム出席のため
代々木オリンピックセンターへ向かった。

 

《2023年卒祭特設サイト》

 

 

 

 

 

気になった作品を紹介!

 

 

 今回の作品展ですが、本当に全てが素晴らしかった!

日本自転車の未来への希望を見た気がしました。

ここで全ての自転車にコメントを付けて紹介したいのですが…

当サイトが気になった作品をピックアップして

紹介したいと思います。

 

また、開発者の声もLINKとして貼っておきますので

是非、次代を担う若者たちの声も聴いてもらえればと思います。

 

 

 

Humer
KOSHIRO HAMADA/ 濵田 耕史郎

【作者コメント】
おしゃれなカフェやお店に展示できるような自転車を作りたく制作しました。1970年代に活躍したmoserの自転車をイメージし、フレーム本体も変わった形にしました、前タイヤを後ろタイヤより少し小さくすることによって、よりオシャレな雰囲気に仕上げました。

【サイクリング長野より】
 この自転車をみて先ず思ったことが、ここへ来る前に「TCD卒業制作展の作品のイメージは?」と聞かれれば、おそらくこんな感じの自転車をイメージしたかも知れません。往年の自転車「moser」をインスパイアした作品とのことですが、今回自分を誘って下さったCoppiさんが、昔まだ自転車界で駆け出しの自分を江古田にある「JAZZ BAR そるとぴーなつ」に連れて行って下さり、展示されている実物「moser」を見せて下さいました。それから時が流れ
その不思議な縁に導かれこの作品の前に自分が立ったような気がします。また、個人的にこの「一筆書き」で書かれたようなフレームと塗装の美しさ、もしこの日1台プレゼントしてくれると言われたら、自分はこの自転車を持って帰って美鈴湖競技場の玄関に飾っていたかもしれません。

 

作品コンセプト

 

 

 

MAIMAI
TATSUYA DOSEI / 道姓 龍哉

【作者コメント】
現代の自転車は合理的で機能的であることが求められます。例えば、速かったりたくさん荷物が積めるなど。それはモダニズム的でシンプルに洗練されたデザインを良しとする価値観に縛られていると感じました。対して私は、そこから抜け出し自由な発想でデザインしたのがMAIMAIです。コンセプトは「正しくない自転車」です。

【サイクリング長野より】
 先ず、展示室に入って「オッ!」という驚きと存在感を見せつけてくれた自転車でした。カタツムリをイメージした「造形」と「オリジナルのロゴ」。最初に感じたのは「サドルが無い!?コレはどこに乗るの??」ということ。この自転車のコンセプトが「モダニズムからの脱却」「正しくない自転車」であるならば、常識という概念に捉われた自分は完全に作者の思惑通りのリアクションをさせられたのだろう…と少し敗北感を感じさせられた作品です。同時に、若きアーティストというのはこのくらい気鋭であり、発想が自由で飛び抜けいないと…とも思わされました。クリエイターとして、アーティストとして今後の活躍を期待したいと思います。

 

 

(参照元:Youtube/学校法人水野学園 卒業制作展

 

作品コンセプト

 

 

 

Cop
MIKITO KANEKO / 金子 樹斗

【作者コメント】
少しの時間や近場の移動で、気分転換や刺激があり、盗まれにくそうな自転車をコンセプトにしました。盗難で一番多いのは、移動手段として盗まれそのまま乗り捨てられることだそうです。歩きより楽という理由で選ばれる自転車、ならその楽さをなくしてしまえばいいと思い、サドルをなくして立ち漕ぎのみにしました。

【サイクリング長野より】
 「盗難防止のため最初からサドルが無い」この発想が凄く面白い!、また「チョイ乗り限定」に振り切っている所も面白さを感じます。一方で「じゃぁLoopでもいいじゃん!」と思うのですが、そこにこそ自転車に対する作者の強い想いと、漕ぐという動作が必要な自転車でなければ得られない「刺激」を感じます。それともう一つ、これジムにある「エアロステッパー運動」に近い運動効果が得られるので有酸素運動をしながら筋トレ効果も期待できるかもしれない…

 

(参照元:Youtube/学校法人水野学園 卒業制作展

 

作品コンセプト

 

 

 

HIGH VISIBILITY CARGO BIKE[ Cargo bike ]
MIKITO KANEKO / 金子 樹斗

【作者コメント】
都市部を駆け抜けるメッセンジャーの文化に触れることの多かったこの三年間。JCMC、CMWCに参加してその場の空気を感じてきた私は、そのカルチャーに対して私なりの感謝を形にしたいと思いました。視認性の高い、より安全なカーゴバイクというコンセプトでメッセンジャーや業界の方々に届くことを願います。

【サイクリング長野より】
 作品紹介文のとおり、この作者がこの3年間で何を学び・どんな経験を得て来たか…。それを体現した作品だと思います。都市部におけるメッセンジャーという仕事で求められるものは、一重にどの運送方法よりも早く目的地へ荷物を届ける『迅速性』だと思います。しかし、都市部での業務は自動車・歩行者などの交通量も多く危険と隣り合わせな仕事でもあり、この作品はそうした課題をと向き合い、自身の経験から得た「利便性」や「安全性」が作品に強く反映されていると思います。HIGH VISIBILTYの名のとおり「高い視認性」の確保は、作者の学生生活で得たもの全てが詰め込まれた入魂の作品であると共に、作者の学生生活が非常に濃いものだったことが伺え感服させられました。

 

作品コンセプト

 

 

 

metamorphose
MIKITO KANEKO / 金子 樹斗

【作者コメント】
「走れるフィッティングバイク」がコンセプトです。トップチューブとステムの長さが可変し、シートポストの高さを変えることであらゆる体型の人が乗れ、自分のベストポジションを探すことができる700cのロードバイクです。身長約160cmから185cmの方まで対応しています。

【サイクリング長野より】
 いま自分のなかで「夢の自転車はどんな自転車ですか?」と問われれば、「1台で身長130㎝の子供から190㎝までの大人が乗れる自転車」が欲しいと答えます。県内の方はご存じの通り、自分はいま美鈴湖自転車学校や美鈴湖VELOクラブで、小学生から高体連の選手たち、壮年の皆さんのレンタル自転車を管理しています。その時に困るのが、レンタル自転車のサイズ合わせです。自転車学校でもそうですが、本当に美鈴湖競技場にある自転車で何とか回さなければいけない… そうした悩みに限りなく応えてくれたのがこのバイクです。「サドルの高さ」「ハンドルの高さ」「シートとハンドルの距離」を簡単にアジャスト出来るこの自転車は、もしかしたら今後のレンタル自転車市場に一石を投じる可能性があるかも知れません。

 

作品コンセプト

 

 

 

RONDE BIKE
YUTA IZUMIDA泉田 勇太

【作者コメント】
折りたたみ自転車はコンパクトになり置き場所も嵩張らない。しかし「折りたたみ組み立てる」その工程が面倒くさい。そんな工程をなくし置き場所も嵩張らずちょっとした移動にも使えるような自転車をつくりたいと考えました。特徴的なフロントホイールと8インチの組合せによりコンパクトな設計にしました。

【サイクリング長野より】
 「折り畳みバイクは…折りたたむのが面倒くさい!」。なるほど、世の中の大半はそう思っているかも知れないし、世の中の「ニーズ」とは突き詰めて行けばそんな「ズボラな類のモノ」なのかも知れません。その発想をカタチにするとこうなる!!というこの作品ですが、シンプルな外見とは裏腹に非常に細部まで考えられていると思います。サドル位置が後景になれば当然、自転車ごと後ろへひっくり返ってしまう。そのバランスを考慮しながら絶妙な位置にシートチューブとサドル位置を配置しているところにこの作品の難しさや肝を感じます。

「折りたたむの面倒臭ぇ!なら折りたたまない自転車を創ろう!」という発想も面白いし。また、それを実用に耐えられるカタチにすることの難しさを感じさせる作品だと思います。

 

作品コンセプト

 

 

 

LIBERTY RACER
YUYA SATO / 佐藤 友哉

【作者コメント】
「バイクの見た目に近づける」を目標に制作しました。バイクの見た目に寄せるとどうしても車体重量が嵩んでしまうので電動ユニットを装着し、楽に漕げるようにしました。参考にしたバイクはSR400のカフェレーサーカスタムです。今までに見ない仕上がりになったと思います。

【サイクリング長野より】
 最近、サイクルモードなどで良くみるタイプの自転車であり、昨今の一つのトレンドを感じさせます。なかでも、日本は自動車産業と共にオートバイでも世界的に有名であり、オートバイといえば日本の「KAWASAKI」「SUZUKI」
「HONDA」「YAMAHA」をイメージする外国人も多いと思います。そうしたなかで、こうした自転車はもしかすると海外市場で訴求力を発揮するかも知れません。また、インバウンドで日本を訪れた外国人へのレンタサイクルという分野でもこうした自転車は人気になる可能性を秘めていると思います。

 

作品コンセプト

 

 

 

IDIVISION3
KODAI YOKOYAMA/ 横山 航大

【作者コメント】
タンデム自転車は、2人乗りの特殊な自転車です。一方、分割自転車は、必要に応じて自転車を分割して持ち運ぶことができる便利な自転車です。その2つのいいところを兼ね合わせた自転車になります。普段はタンデム自転車ですが、分割して真ん中の部分を取ると1人乗りにもできます!

【サイクリング長野より】
 昨年(2023年)東京都で公道走行が解禁されたタンデム自転車。ただし、これは中央の部分を取り外すと一人乗り自転車にも転用できる非常に面白い自転車。タンデム自転車を運ぶという面でも分解が可能で持ち運びにも非常に有効。この自転車にしても、発想もさることながら、それをカタチにする創造力と技術、創意工夫が秀逸。このパステルカラーの車体色も老若男女幅広い層に好まれそう。

 

(参照元:Youtube/学校法人水野学園 卒業制作展

 

作品コンセプト

 

 

 

BIKE FLEEK
RYO YAMAMOTO/ 山本 諒

【作者コメント】
普段の通勤や買い物などの街乗りを快適にこなしつつ、週末などは林道にもいけるおしゃれとワイルドを両立した自転車をコンセプトに制作しました。このフレームだけで色々な組み方ができるよう正爪エンド、ディレイラーハンガー、カンチ台座、センタースタンド台座、太めのタイヤも入るクリアランスと欲張った仕様にしてみました。

【サイクリング長野より】
 海外に住んでいた時に「日本のコレがあったらいいな」というモノが二つあった。一つは料理に使う「めんつゆ」、もう一つが移動に使う「ママチャリ/軽快車」だ。共通しているのは「万能性」で、海外にはこの前カゴがついた小回りの利くママチャリが存在しない。自分が思うにママチャリは世界に誇れるオールラウンド自転車で、日本が世界に誇れる文化の一つだと思う。今回の展示会でママチャリをテーマにしたものは2つあったうちの一つ。この自転車の秀逸なところは、38cタイヤまで装着可能なクリアランスが設けられていると同時に、車体にもそれに負けない強度を持たせてあるということ。とかく、海外の路面状況は日本のようにクリーンでは無く、国によっては未だ未舗装道路という場面も幾らでもある。また、タイヤをグラベル系タイヤにしてスポーツ走行も楽しめるかもしれない。海外に住んでいる頃ならばこの自転車を買って帰ったかも知れない。個人的に白地にピンクの文字は女性にも選ばれやすいカラーだと思う。

 

作品コンセプト

 

 

 

コカーゴ
SHUN OHKUBO大久保 駿

【作者コメント】
荷物を運ぶための「カーゴバイク」は通常、荷台を大きく設けており、車体が大きくなります。そこで私は荷台を比較的「小」さくし、「小」径のホイールを使い、「小」さな車体をコンセプトに、小さいカーゴで「コカーゴ」を制作しました。前輪は、重い荷物を載せても安定して走行できるように2輪で設計しました。

【サイクリング長野より】
 少し前に、マスターズの平林和美選手(イナーメ信濃山形)とこんな話をした。「親が後期高齢者になり免許を返納した、自転車は危ないし、電動アシストのトライシクル(三輪車)を探そうか…」と。我が信州において免許返納後の高齢者の移動手段はひとつの課題となっている。特に免許を返納しても農業に従事する高齢者の方も数多くいらっしゃる。その一つの答えがこの自転車の延長線上にある気がする。より安定性を増すために車体と前輪の間にバネを仕込むなど工夫がめぐらされている。ただし、この自転車に関しては高齢者が乗るには少し安定性の面で厳しいかも知れないが、こうした試みがもしかしたら新たな地域社会の課題の解決策に結びつくかもしれない。

 

作品コンセプト

 

 

 

TOWN FAST
RUI NIIMI/ 新美 瑠偉 

【作者コメント】
コンセプトは自転車通勤通学の人の時間短縮と、電車通勤通学の人の運動不足解消の為の自転車です。軽量のエアロパイプを使い、ステムとトップチューブが一直線上になるようにし、ストップ&ゴーの多い街中でもキレがあり、伸びのある走りができるようなジオメトリーになってます。

【サイクリング長野より】
 2年ほどの記事で「高校生はなぜ通学用にロードバイクを選ぶのか?」というテーマで、地元自転車店にインタビューした記事をUPしたと思います。その際の主な答えが、特に風の強い平野地域・河川敷地域を走る子は、ロードバイクにすることで風の抵抗を減らして通学が快適に出来るから…。ママチャリと比べて10分違う!という面白い声が集まった話をしました。自分も川沿いの高校に通っていたので自転車通学の際の物凄い風は本当に大敵だったと納得しています。この自転車はそうしたニーズに対して非常にユニークなアンサーを提案してくれたと思います。ただし、このTTバイクでディープホイール。おそらく相当に乗る人を選ぶ自転車だと思いますが、こうした細かい部分(ニーズ)にしっかり気づいている作者の洞察力を高く評価したいと思います。

 

作品コンセプト

 

 

 

TART Circle Writer
TASUKU OHASHI / 大橋 侑玖

【作者コメント】
私の住んでいる町での自転車は、海が近いため錆びて重たくなり乗るのが億劫というイメージがあります。そんな人達に進めたい自転車を制作しました。自転車の値段は上がり続け、もう使い捨てる値段ではありません。だからこそハンドメイドの自転車で愛着をもって一生乗ってもらいたいと考えました。

【サイクリング長野より】
 説明文のとおり、自分の地域に対する愛や乗り手に対する配慮、また一つの自転車を長く乗ってもらいたいという作りての想いを感じる作品です。どうしても自転車は経年でサビてしまう。しかし、あえてサビの色と相性の良いカラーを採用することで年を経るごとに味わい深く、エイジングを楽しめるようにという優しさを感じさせる自転車。パーツも耐久性を重視して、互換性を追求しているという「真のSDGs」を感じさせる作品。この先、どんなに街変わろうと、どんなに時代が変わろうと、その風景にしっかりとこの自転車が溶け込んでいる…。そんな普遍的な魅力を持った自転車だと思います。再三になりますが、この作者の優しさが伝わってきます。

 

作品コンセプト

 

 

 

Blue Branch
JO NAKANO/ 中野 丈

【作者コメント】
前々から「細いパイプで自転車を作りたい」という思いがありました。設計図を試行錯誤していくうちに、Cinelli のLASERを作りたいと思い、細いパイプでそれを作ろうというのがきっかけです。シートチューブがない設計なので細いパイプでも耐えれるようにシートラグ付近とBB付近に強度持たせる設計になっています。

【サイクリング長野より】
 率直に芸術性が高く、凄く美しくて格好いいと思います。中央のシートチューブが無いということで、自転車の合成を保つためには様々な工夫と苦労があったと思います。カーボンフレームが主流の昨今ですが、この先、必ずこうした実用的かつ高い芸術性を併せ持った作品は再評価される時が来ると思っています。そして、こうした芸術性の高い自転車を「Made in Japan」の世界に誇れる製品・文化として、日本は「技術」と「人」を守って行かなければならないと思います。

 

作品コンセプト

 

 

 

V SPIN
KAZUKI OHASHI / 大橋 和輝

【作者コメント】
観光などで人力車に乗っても、普通の人力車では前方の景色しか見る事が出来ません。せっかくの観光なので前方だけではなく、360℃どの景色も見られたらより観光を楽しむことができます。さらに特別な人力車に乗れているという優越感に浸れるものを作ろうと思い、人力車とコーヒーカップを掛け合わせた物を作りました。

【サイクリング長野より】
 この作品を見た最初の感想は「だっ、大八車がある!!」と…。そして、この作品は個人的に非常にタイムリーでした。先月ある論文を読んだのですが、いま日本の自転車学会では、日本の歴史において自転車は何時から日本に存在したか?ということが研究されています。その研究によれば、享保年間の時代に「陸舟車」という乗りものが日本における最初の自転車では無いか?という学説が生まれています。そして、その論文は海外でも有識者の間で議論されています。この作品は今話題の「陸舟車」を彷彿とさせる造形をしています。

今後、陸舟車が日本初の自転車と認知されるか?ですが、その前提として「そもそも自転車の定義とは?」という原点に戻ります。自転車とは、フランスが言う”バイ”シクル(つまり二つの車輪によって構成されるもの)なのか?はたまたそれ以外なのか?少なくとも自分は、自転車というのはもっともっともっと自由であっても良いと思います。自分の定義であれば、この作品も十分に自転車であり、この作品は今回の作品展のなかでも個人的には最も印象に残った作品でした。

 

作品コンセプト

 

 

 

STAR FIGHTER
SHOMA ITO / 伊藤 匠真

【作者コメント】
前輪駆動の方が効率良く走行出来るのではないか?でも効率を重視するならば後輪駆動にするべきではないか。それらをまとめて検証するため、この自転車を製作しました。直感的な操舵が出来るように、フォークコラムをダウンチューブ内に縦通させ、後輪をダイレクトに操作できる構造が特徴の自転車となっています。

【サイクリング長野より】
 今回のグランプリ作品ということで、前輪駆動という発想が面白いし、デザインにも並々ならぬ拘りを感じます。ただそれ以上に感じることは、この造形になった場合、必然的に後輪部分が不安定になってくる。その問題を細部の細部まで考慮し乗り手の安全性を非常に良く考えて作られていることが素晴らしいと思います。さもすればこうした挑戦は、製作者の「理想・挑戦」を乗り手におしつけるということが多々あるがそれを感じさせない配慮に作り手の配慮を感じさせる作品だと感じました。

 

作品コンセプト

 

 

《平成五年度「卒祭」展示作品》

 

 

 

幸せな社会をつくるため自転車は何が出来るか?

 

 

今回の初訪問ですが、生徒さんたちの

あふれる情熱と、非常に鋭い感性に触れて

まだまだ日本のモノづくりは

死んではいない!世界と戦える!と感じました。

そんな気鋭の作品を見ていて

ふと思い出したことがありました。

 

 

 

それは、シマノ博物館(堺市)で毎年開催されている

小学生の自転車アイディアコンテスト

こんな自転車が欲しかってん!コンテストです。

2022年大会のテーマが…

 

 

 

幸せな社会をつくるために自転車は何が出来るか?

 

 

 

という課題に対して、子供たちが

様々なアイディアを文章で発表するという企画でした。

審査では、「理論性」「デザイン性」「発想力」が問われ

その時に、大阪の小学生が

私が考える「未来の自転車」を綴った文章を思い出したのです。

そのなかで個人的に印象に残ったのが二つ。

 

 

◇おじいちゃん、おばあちゃんを運びたい。

クリックすると大きくなります。

 

◇車いすのお年寄りの楽しいおでかけをサポートします!

クリックすると大きくなります。

 

皆さんは、この子たちの何が凄いと思いますかね?

自分は、この子たちが自分の作品の完成度では無く、

どこまでも純粋に乗り手のことを考えに考えて

細部まで考え抜かれているところです。 

 

 

そうなると…

 

自転車の造形は、自ずと2輪では無くなる。

簡単なことですが、子供たちの想いが

この結論を無意識に導き出している所に

頼もしさと、恐ろしさをも感じます。

 

 

そして、今回の専門学生たちは

そこから一歩進んで

各々が思い浮かべる未来の自転車を

自分の習得した技術を持ってカタチにしたことが

本当に素晴らしかった。

 

 

 

この先の日本自転車界の希望だと思います。

 

 

正直、ここ数年来

大学自転車界でも、高体連でも、

その下のユース・キッズ世代でも

日本自転車界の若者・子供には

少し物足りなさを感じていました。

また、日本の自転車界の

特に自転車制作の面にについては

もはや斜陽を感じていました。

 

 

しかし、今回の専門学校訪問で

日本自転車界に脈々とながれる伝統

それを革新に変えて行く若者たちの可能性に

大いに刺激を受けました。

 

 

個人的に思うのは、日本自転車界は

こうした若者を大切にして欲しい。

どんどんチャンスを与え育てて欲しいと思います。

本当自転車業界ににいて久しいですが

久しぶりに日本自転車界に

鮮やかな朝日を見た気がしました。

 

 

最後に、自分のなかで素晴らしいなと思った作品…

 

 

 

Hydrangea
KENTO NAKAJIMA/ 中嶋 健斗

【作者コメント】
コンセプトは「訪問介護職員向け自転車」です。訪問介護職員の方が介護先に行かれた際に、訪問中に車体を移動されてしまったり車体が重くて持ちづらいという悩みを聞きました。そこで従来の自転車よりも軽く、また「訪問介護中」という札を置くことで移動されにくい自転車を作りました。さらに走りやすい自転車を目指しています。

【サイクリング長野より】
 社会福祉と自転車…。現在進行形の非常に重要なテーマだと思います。訪問介護職員の方に使いやすい自転車というコンセプトの基に、軽量化や汚れにくい工夫。女性の介護士さんを想定して女性らしい淡い水色を選択。さらに、訪問介護中であることを周囲に知らせるカードを自転車に搭載するなど使い手に対する配慮を感じさせる作品。メッセンジャー用の自転車もそうだったが、こうした働く人の負担を軽減させる自転車、人々が幸せに暮らすために必要な役割を担う自転車が今後もっと増えれば世の中はより快適により良いモノになって行くと思う。そして、この作品に代表されるように、どこまでも乗り手のことを考える心を大切にして欲しいと思います。

 

作品コンセプト

 

 

 

 

 

というわけで、

東京サイクルデザイン専門学校の

「卒祭」に行って来ました。

 

 

いや、ホント凄いモノを見た。

彼らはもう気鋭の

「プロ・アーティスト集団」でした。

 

 

その情熱と才能は、今までの自分が知る

自転車界では感じたことが無いし

まして、大学自転車・高校自転車で

感じたことが無い。 

 

 

本当に誘っていただいた

Coppiさんに感謝です。

 

 

Coppiさんが、専門学校の

先生・職員の方たちに

自分を紹介してくれるんですが… 

 

 

サイクリング長野!

もちろん存じております!!

 

 

みたいなリアクションされるたびに… 

 

 

いやいや、恐れ多い

「長野自転車界の有害サイト」認定されてますが…

と本当に申し訳無くて

心のなかで呟いていました。

 

 

でもね、今回一つ

長野県サイクリストの皆さんに

知っておいて欲しいのは

日本の自転車づくりは

まだまだ死んでないってこと! 

 

 

そして、この先の将来

この分野は必ず世界で

日の目を浴びる日が来るということ。

これは予感では無く確信です。

 

 

ただ、この才能を活かすも殺すも

日本の自転車業界次第だということ。

願わくばこの若き才能を

多くの皆さんの手で育てて欲しいと願います。

 

 

実は東京五輪の時に御存じの通り計時種目ではスタート担当だったが
競走系種目ではピット担当だった。その影響でスタッフたちから
イイようにパシられたが、様々な国のメカと仲良くなり

各国が五輪のために投入したバイクについて様々なことを自分に話してくれた。
機材に興味の無い自分にはチンプンカンプンだったが
五輪が戦争であるなら、選手だけでなく機材開発も競争だと思わされた。
自分が一番ビックリしたのがロータスの自転車。
今はもう古いデザインかもしれないが、初めて見た時の衝撃は忘れられない。
もはや造形が「バットマンカー」これ何か意味あんの?と率直に聞いてしまった。
そして、この形状が発走機に入り辛かったのも遠い思い出。
願わくば、この学校の卒業生の中から世界一のバイクや
自転車史に残るような自転車を生み出す人材がが出てくればと思います。

 

 

 

関連LINK

2023卒祭特設サイト(TDC)

東京サイクルデザイン専門学校

専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ自転車メカニックコース

学校法人水野学園



 
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