〔特別寄稿〕日本発のツーリング自転車コンテスト 「Japan Bike Techniqe 2019」レポート。

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

日本発のツーリング自転車コンテスト「Japan Bike Techniqe 2019」

 

 今回のサイクリング長野は、信州高山村で6月15日・16日に行われた「Japan Bike Technique 2019」の模様を美鈴湖自転車学校でもお馴染みの、東京都自転車競技連盟普及委員会の松本敦副委員長よりレポートを頂きました。

 

 

 

Japan Bike Techniqe 2019 レポート

 

日本発のツーリング自転車コンテスト
Japan Bike Techniqe 2019

レポート:松本敦

 

既成概念を打破する面白さ

 未来に向けた「日本のツーリング作り」がテーマの新しいコンテストイベント、「Japan Bike Techniqe 2019」が信州高山村You遊ランドと周辺の山岳コースを舞台にして6月15日〜16日で開催された。

参加コンテンダーは17で、フレーム製作が生業のワークス(メーカー)、フレームこそ外部製作だがパーツアッセンブルやコンセプトに注力するコンストラクター(ショップ)、趣味人で主旨に賛同したプライベーター(ユーザー)の3つのグループ。プライベーターでも自らフレーム製作をする人もいたし、自転車関連の学生仲間で参加した若者の斬新な発想も、未来に向けたイベントに相応しく刺激的だった。

審査員は渡部裕雄氏、渋谷良二氏、佐橋毅氏、長谷部雅幸氏という自転車業界かつての重鎮たちで、筆者もその末席に並ばせていただいた。この審査、大変に複雑で微に入り細に入りの基準項目チェックと、観衆の人気投票に、審査員の主観的評価で最終的なポイントが結果に結びつく。

 

総合結果は…

 

1位:ベロクラフト(ワークス)

2位:テンション・シルク(ワークス)

3位:montoson(ワークス)。

 

審判による評価のコンセプト、技術力、実用性、デザインの4つの部門別覇者は、コンセプトはmontson、技術力と実用性の両部門でサイクルスポーツ(プライベーター)、デザインではCHERUBIM(ワークス)。さらに日本の旅自転車ならではの評価軸になる輪行はNAGARA(プライベーター)。岐阜のNAGARAは、四角形のチューブをはじめ輪行用のガードステーがワンタッチ脱着式で、デザイン感覚も抜群。

 

 

学生チームが示したeバイクの可能性

実走(距離74.2km、最大高低差1,583m)ではなんと、eバイクで旅自転車を作って来た東京サイクルデザイン専門学校のチームTCD(プライベーター)が、現役ロード選手をライダーにしたCHERUBIMを抑えて勝った。おお、時代は動いている。

だがJapan Bike Techniqe は、ルーツがフランスの軽量化選手権であり、軽さが大きな評価軸。10kgの基準重量設定値には、バッグ、照明機器、携行ポンプ、工具を含まれる。それの50g単位でポイントが加減点される。実走で勝ったチームTCDはその主旨に反旗を翻すかのような超重量級で、2位のCHERUBIMは軽いけれどそのライディングポジションが常識的にはレース的な前傾姿勢となるので、“ツーリング車”の概念からはやや逸脱。体力と柔軟性に富んだ選手が誂えるツーリング車と考えれば、CHERUBIMはスタイリッシュなツーリング車であるとも言えるが……。

個人的にはどの賞典にもかすらなかったが、Equipe c speed(プライベーター)のフィクスドギヤの疾走感を愛するあまり、棒式変速機まで自作した小山博史氏の情熱にもグッときた。実走もちゃんとこなせたのだから、その男気やよしだ。

また、軽さを追求して製作された各車は、激しい林道ダウンヒル区間で泥除け破損が続出。フィニッシュ1位のCHERUBIMはフロントタイヤのサイド2箇所が破れる寸前という状態。

軽量自転車が実走してその信頼性を証明するコンテスト、実にリアルだ。ただ美しく機能的であるだけじゃあ勝てないから面白い。

末筆ながらこのイベントのオーガナイザーである京都のショップ、アイズバイシクル土屋郁夫氏のご尽力と、あくまでフェアな運営姿勢に敬意を表したい。

 

 

 

Japan Bike Techniqe 2019 大会の様子。

 

 

まだ暗い4時スタート。ハブダイナモやバッテリーで路面を照らす。
全チームにはGPSチップが渡され、YouTubeで各チームの現在位置と
数カ所のライブカメラによりレース実況が配信された。
〔画像はクリックすると大きくなります〕

 

 

重量部門の覇者はテンション・シルク。ダウンチューブは細いワイヤで、ワンタッチで輪行可能。
その軽さをアピールするように代表者の荒井正さんは指一本でバイクを持ち上げてみせた

 

 

東京サイクルデザイン専門学校の生徒3人がグループ結成して作ったこれは、
シマノのEバイックユニットを流用し、独自スケルトンを試行錯誤。
ちっとも軽くないが発想には羽が生えていた。

 

 

写真を拡大しないと分かりづらいだろうが、2つのギヤレシオが選択できるように
棒式変速機を装備したc speedのフィキスドギヤの自転車。
あまりにおバカなところにキュンときた。

 

 

二十代の若い3チームが参加。伝統にとらわれない発想も素晴らしいし
自称ツーリング好きな若者も話してみるとやはりどこか
ジェネレーションギャップがあるが、まっすぐだった

 

 

 

美鈴湖自転車学校の立ち上げの際に

松本市まで来て頂き、長野県自転車界とも

非常にゆかりの深い松本敦氏より

信州高山村で行われたユニークなイベントの

レポートをご寄稿いただきました。

「日本の自転車づくり」に携わる人々が

持てる技術の粋と、威信をかけて競い合う…

その情熱がSNS等を通じて伝わって来ました。

今から来年度の開催を楽しみにしつつ

大変興味深いイベントのレーポートを

御寄稿いただいた松本さんに

心より御礼を申し上げます。

 

 

関連LINK

Japan Bike Technique 2019

信州高山村 You游ランド