〔お知らせ〕審判試験合格者の皆さんへ「春からの自転車審判デビュー」に備えて《後編》

「令和6年 能登半島地震」で被災された全ての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。度重なる報道を見ていると本当に圧し潰されるような感情が去来します。特に一昨年お世話になった能登島コミュニティセンターが避難所になっているとのこと…。いまこの時点で出来ることは多くありませんが、当サイトも皆様の御心に寄り添い、皆様と共にありたいと思っております。どなた様も引き続き余震が続いておりますので、先ずはくれぐれも安全にお過ごしください。〔1月5日〕 

自転車審判デビューに備えて《後編》

 

先日、昨年のJCF公認ロード・トラック・シクロクロス3級審判試験に合格して、この春から審判デビューされる方々から当サイトへ幾つかの質問を頂き始まった今回の企画。後編は審判執務が決まってから、当日のお仕事内容などについてお話しして行きたいと思います。全てを読む必要はありません、必要な所をつまみながら、失敗談を笑って下さい。

 

 

執務依頼書が届いたら

 

《必ず同封の書類をチェック》

 

 執務依頼書が届いたら、必ずその中にテクニカルガイドと言われる

大会の詳細が書いた書類が届きます。そこには、大会のスケジュールや

特別ルール等が書かれているので必ず確認をお願いします。

また、どこのポジションを担当するのか?も記載されているので

当日のご自分の「持ち場」と一緒に仕事をする人を確認して下さい。

尚、自転車界にはコミュニケと云う「お知らせ」が大会公式文書として
発行されるので名前だけ覚えておいて下さい。

 

 

《持ち物で特に大切なもの

 前編で、個人で持って行く審判道具について記載しましたが

個人的に最も大切ものは…

 

・雨具や防寒着

・日差し・暑さ対策です。

 

特にロードレースでは、炎天下の中で一日中コースに出る場合があります。

路面からは強烈な照り返しもあり、時に体感温度は40℃を越えることもあります。

 

過酷な暑さの中、レース後「アイスバス」に直行する選手達
全日本MTB選手権(富士見町)

 

また、トラック競技では美鈴湖自転車競技場の場合

海抜1000メートルを越えている為に空気が薄く

日差しが物凄く強いために「UV対策」(帽子など)が必要です

 

夏場は強烈な日差しの美鈴湖自転車競技場
空気が薄いためUV対策は必ずしたい。

 

一方シクロクロスでは、一昨年の野辺山で

朝の気温が-12度と云う極寒の中での執務となりました。

県外の方は特に、寒冷地では厚手のインナーウエア等

万全の対策をお願いします。

 

昨年の全日本シクロクロス(滋賀県)は前が見えない程の雪となった。

 

 

その他では、どの大会でも必ず雨天の可能性があります。

ある程度のレインウエアと、防水効果のあるシューズ。

シクロの場合は「長靴」等の泥対策も忘れずに…

また、MTBの方は特にですが、山奥では

蚊・ヒル・蜂・ブヨ等の防虫効果も忘れずに。

 

 

個人的に去年、買って良かったものNo1のミズノ・レインウェア
上下1万円で良く水を弾く優れもの!ただし
皆が同じ考えに行きつくので、高確率で誰かとペアルック…

 

一昨年から防水のトレイルランニングシューズを採用しています。
理由はそれだけ雨が多く、靴の中が濡れると翌日も気持ち悪いから。
今はゴアテックスやウォータープルーフ等安く買えるようになった。

 

信州シクロクロスの審判団が愛用するAItoZの防寒着
こう見えてスキーウェアでお馴染み「光電子綿」機能を持つ。
寒さだけでなく、少々の雨や雪にも対応する。

 

 

審判の服装

 

 審判の服装については、実は厳密な指定は無い。

ただし、大会によってドレスコードが違うので要注意。

長野県の場合は、県審判員の紫のポロシャツと帽子が

支給されるが、県外の大会へ応援に行く際には基本的に…

 

「紺色のジャケット」「白いシャツ(ポロも可)」「グレーのパンツ」

 

が基本となるので服装に迷ったら上記の服装で行けば間違いは無い。

ただし、大会当日ユニフォームが貸与・支給される場合もある。

 

 

審判着はどちらかというとパンツが重要で
スリーシーズン対応のグレーのものを用意しておくと便利。
速乾性のあるゴルフ用などもオススメ

 

 

審判の仕事の種類

 

 さて、新人の皆さんにとって審判の仕事とはどんなものがあるのか?

会場で何を自分がやることになるのか?不安だと思いますが…

サッカーに例えれば、いきなり主審や線審をやることは少ないはずです。

どちらかと云えば、タイムキーパーや記録係、第4の審判等の

オフィシャル業務(競技役員)の仕事がメインとなります。

では… 各種目の主な仕事内容を書いて行きたいと思います。

 


 

《トラックレース》

・検車員

・受付係(選手の出走状況を管理する)

・招集係(アッシャーとも呼ばれ、レース時に出場選手を揃え管理する)

・スターター(唯一レースを止められる偉い人:主にチーフ)

・フィニッシュジャッジ(決審:着順を目視で判定する人)

・ビデオジャッジ(ビデオ機材を用いて着順判定する人)

・コーナージャッジ(4つのコーナーで反則が無いか見る)

・タイムキーパー(手動計時スタッフ&電子計時スタッフ)

・周回管理(周回を管理する)

・周回打鍾(ベルを鳴らす人)

・ホルダー(発走機/スタート時に自転車を支える)

・フラッグマン(発走機まわりの親玉:発走完了の旗を揚げる)

・サポートスタッフ(落車があった時などの対応をする)

・セクレタリー(リザルトの編集・発行をする)

 

【新人の皆さんへのワンポイントアドバイス】

ロードは知ってるけど、トラックは疎い方も沢山いると思いますので初心者にありがちな失敗(自分がやった失敗)を書いて行くので参考ににして下さい。

 

周回板は選手が目の前を通ったら… (周回管理)

 自分がやらかした失敗ですが、周回管理の仕事は本当に1日中ずっと目の前をぐるぐると走る選手を見続ける訳で、頭が一度混乱すると誰が何周しているか?ほんの少しの弾みで解らなくなります。極限の緊張状態でも、瞬間的に催眠状態に入っているので注意が必要です。個人的には、選手が自分の前を通ったら周回を減らすというルーティーンを作ると便利かもしれません。自分は過去に1周多く選手を走らせてしまったと云う嘘のような本当の失敗があります…

 

ホームとバック同時出走の場合、周回板はチームプレー(周回管理)

追抜き競技のような場合、ホームとバック同時出走で2名の選手がコース上を走ります。これが曲者で!同じユニフォームの選手がコース上に2名いると最初は大混乱です。ですので、ホームとバックの周回管理者+チーフの3名で必ずお互いに周回板を見せ合い確認をしながら周回管理を行います。自分の前を選手が通過したら、周回板をめくり、向こう側の周回担当者と中央にいるチーフに周回板を見せ合い互いに確認しながら周回を管理して下さい。

 

周回ベルを鳴らそうとしたら、周回ベルが吹っ飛んだ…(周回打鍾)

正直、競技場のベルが吹っ飛んでしまったことが何度かありました。今思えばかなり笑えるのですが!本当に新人の頃は頭が真っ白です。そんなアクシデント時には、選手に大声でそれがファイナルラップである事を伝えてあげて下さい。「ラスト!ラスト!」と選手を見ながら云って知らせてあげることが重要です。でないと… 選手を1周多く走らせてしまいます(前科2犯目)

 

団体追抜きのタイム計測は3人目でとる… (手動タイムキーパー)

新人の方で手動タイムキーパーをやる時に犯しがちな失敗として、4人で走る団体追抜き(チームパシュート)での計測です。特に前が3人で走るチームスプリントだと混乱しますが…。パシュートはトラック競技で唯一タイム計測を3人目の選手で行います。当り前!と思うかも知れませんが、初めて審判の現場に出ると誰しもがその場にいるだけで精一杯です。そんな時にここでの書き込みを思い出してもらえればと思います。

 

 


 

《ロードレース》

 

・検車員(主に重さや大きさ等を見ています)

・受付係(選手の出走状況を管理する)

・車上審判員(コムカーとも呼ばれ、レース全体をマネージメントするアンパイア)

・バイク審判(モト審判とも呼ばれ、車上審判同様にレースをマネージメントする)

・ニュートラルカー(共用機材や共用の水分補給を行うサポートカー)

・サグワゴン(回収車とも呼ばれアクシデントの選手対応等を主にする)

・規制車(集団の先頭と最後尾を走りレース開始・終了を告げる車)

・招集係(アッシャーとも呼ばれ、レース時に出場選手を揃え管理する)

・スターター(唯一レースを止められる偉い人:主にチーフ)

・フィニッシュジャッジ(決審:着順を目視で判定する人)

・ビデオジャッジ(ビデオ機材を用いて着順判定する人)

・立哨役員(コース上の安全を管理し、不正が無いかを管理する)

・タイムキーパー(手動計時スタッフ&電子計時スタッフ)

・ピット審判(ピットエリアの管理を行う)

・周回管理/打鍾(周回を管理する)

・関門審判(時間内に通過出来なかった選手の管理で足切りとも呼ばれる)

・セクレタリー(リザルトの編集・発行をする)

 

 

【新人の皆さんへのワンポイントアドバイス】

 最初は主に立哨員としてコースで安全管理を任されることから始まると思います。個人的な意見として、今後大会の運営側として携わって行く上で最も大切なのが立哨員で、およそレース運営と云うのは「立哨に始まり立哨に終わる」と思います。ここをはき違え自転車界の中で自分が偉いと勘違いしてふんぞり返り、協力者である地元の方々の反感を買っている場合が多々あるので特に強く書き残したいと思います。

 

立哨は地元の方と組むことが多い。だからこそ…

立哨員とはコース上に出て共に交通整理をしたり安全管理をするスタッフの事です。それ故に地元を熟知した地域ボランティアの方々と組むことが多いです。だからこそ、地元の方々の想いや本音が聞けるのです。もしかしたら耳の痛くなるような話しを聞くかも知れません。でも、どうか自分のほうが審判で立場が上で…などと思わないで下さい。共に歩むという姿勢こそ、今後の大会運営成功に大きな影響が出るものだと思って下さい。また、応援に来る方々に対してもくれぐれも横柄な態度をとらないように共に心掛けたいものです。

 

集団落車が発生、さて立哨員のあなたは何をすべき?(1)

 一番最初にお話ししておきたいことがあります。それは、レースを良く良く見ていてください。集団落車で起こるのはパニックと混乱です!その中で、先ずはその落車の原因となったものが何かを見ておいて下さい。そこに相手を陥れたり・故意の妨害や違反が無かったか?仮にあった場合、レース後にそれをチーフに報告して下さい。さもすれば単調になりやすいロードレースですが、特に集団が前を通過する際には、安全管理も含めレース全体に意識を集中させて下さい。

 

集団落車が発生、さて立哨員のあなたは何をすべき?(2)

 集団落車の際に最な大切なことは、先ずは自分の安全を確保して下さい!どこの世界でもそうですが、その場の責任者がいなくなってはいけません。その上で、観客と選手の安全を確保して下さい!特に選手の生命に直結する場合はドクターの要請などを無線で行います。そして、必ず後続から来る選手やチームカーにアクシデントを伝えて下さい。医療資格を持たない我々が現場で出来ることは、現場の状況把握(どこで・誰が・どうなっているか?)と、二次的事故を絶対に起こさないことです。落車が発生したら躊躇なくイエローフラッグやホイッスルを使って下さい!

 

 


 

《シクロクロス》

 

・検車員(スタート時にタイヤの幅検査をします)

・受付係(選手の出走状況を管理する)

・招集係(アッシャーとも呼ばれ、レース時に出場選手を揃え管理する)

・スターター(唯一レースを止められる偉い人:主にチーフ)

・フィニッシュジャッジ(決審:着順を目視で判定する人)

・ビデオジャッジ(ビデオ機材を用いて着順判定する人)

・コースマーシャル(コース上の安全を管理・修復を行う)

・タイムキーパー(手動計時スタッフ&電子計時スタッフ)

・ピット審判(ピットエリアの管理を行う)

・周回管理/打鍾(周回を管理する)

・関門審判(時間内に通過出来なかった選手の管理で足切りとも呼ばれる)

・セクレタリー(リザルトの編集・発行をする)

 

【新人の皆さんへのワンポイントアドバイス】

 人気のシクロクロスは、参加者も増え始めてそのレースマネージメントの重要性が年々高まっています。また、どこの大会も和気藹々とした雰囲気もその魅力。天候次第で過酷な状況にもなりますが、トラック・ロードだけでなくシクロ審判にもご参加下さい!

 

通過順位の読み込み係…

 主にフィニッシュジャッジだが、毎周回のラップを把握するために選手のゼッケンをマイクを使い口頭で読み上げそれをPCに記録して行く作業がある。これは、記録係の混乱を招くので読み上げはあくまで1回だけ!自分がよくやる失敗だが、無断で繰り返すと記録係に怒られる。

 

シクロ審判の腕の隠れた花形ポジション

 冬季に行われるシクロクロスを円滑に行うのに重要なのは、選手をスタートにつかせる「アッシャー」(招集)。手際の良く選手の出欠を確認し・タイヤ検査を行いスタートに並ばせるには選手からの信頼やコミュニケーションも重要。優秀な招集は10分以内に100名近い選手をスターティンググリッドに整列させる。

 

80%ルール適用レースでの一苦労

 シクロはトラック・ロードと違い先頭が通過してから80%以上の時間を経過すると「足切り」が行われます。この足切りが一苦労。1度に100名が走るとコース上はまるで夏場の流水プール。ハイスピードで走って来る選手を待避所に退避させて、即座にリタイアの選手のナンバーを控える。審判は集中し過ぎて自転車に轢かれないように注意が必要

 

 

サイクリング長野より 審判員の先輩方へ

 

 今年も自転車審判員として多くの方が、全国各地でデビュー致します。

それを控えて審判の先輩方にお願いしたいのは、ぜひとも新人の方々を

大切にして欲しいと思います。この先の自転車競走界を鑑みると

今年入って来る人達は、未来への希望です。

そんな新しい戦力と、どうか共に歩む努力をお願いしたいと思います。

重ね重ねになりますが…

新たにに生まれた芽を摘み、枝を折るような振る舞いは

厳につつしみ、葉をつけ花が咲き実がなるまで

温かく見守ってもらえればと思います。

 

 

さて、色々と書いてきましたが

これ誰が読むんだろ?

新人として審判デビューされる方

これを熟読する必要は無いです(笑)

それよりも、是非現場へ足を運んで下さい。

最初は観戦に来て下さるだけでも有難く思います。

自分も出来る限り皆さんのサポートを

させて頂きたいと思います。

 

最初は確かに緊張しますが、遠征先での

人との出会いや、良い大会を運営出来た時の

感動は得難いものがあります。

そして、審判に留まらず長野県の自転車界の

発展の為にお力添えを頂ければと思っております。

最後に…

春先に皆さんと会場でお会い出来るのを楽しみにしています。

 

 

関連LINK

長野県自転車競技連盟

競技役員の仕事の紹介(東京都自転車競技連盟)